tetoの日記

思いのままに書いています。🇯🇵🇺🇸🇪🇸

カンボジア旅行記④

アンコールワットの午前の遺跡観光が終わって、15時スタートのツアー後半の開始時間まで空き時間があった。

私は砂埃が舞う黄色い街を一人歩いていた。車やバイクが忙しそうに行き交う。

朝から歩き疲れたので、目に入った小さなショッピングモールに入る。欲しいものもなく、見つけた小さなフードコートで飲み物をオーダーし適当に席に座った。一人で観光案内所でもらった街の地図を広げて見ていると隣に座っていた白人のおじさんが話しかけてきた。

日本人か聞かれ、そうだと答えて私は外国人と話す時の条件反射でどこから来たのか尋ねる。おじさんはドイツ人でここに住んで執筆活動をしているらしい。

最初何を話したかあまり覚えていないが、軽く世間話を話した後、唐突におじさんがカンボジアは電磁波が少なくて良いと言った。

頭の中にクエスチョンマークが浮かぶ。

おじさんは知人の女性が携帯を耳に近づけたまま毎日彼氏と長電話をしていてガンになって死んでしまったと続ける。電磁波攻撃の危険性もあるから、電磁波を発するものを絶対に頭に近づけてはいけないよと深刻な顔で私に注意する。

私はいよいよ焦り出す。まさか軽いスモールトークのはずが、カンボジアで電磁波の危険性を語られるなんて人生何があるか分からない。

おじさんは電磁波が多いヨーロッパから逃れる為にカンボジアまで引っ越してきたのだ。彼の使命は電磁波の危険性を世の中に知らせることで、ここで二冊目の本を書いているのだという。

おじさんの勢いは止まらない。ドイツやヨーロッパがどのような危機的な状況か一人熱く語っている。

このままでは貴重な旅先の一日が謎のおじさんの電磁波の話で終わってしまう。ここから去らなければ…私は必死に話を遮るタイミングを待つ。

おじさんが喉が渇いたのかドリンクに手を付けた時に私はもう行かないといけないと切り出す。すると、なんとおじさんは私に連絡先を聞いてきたのだ。スマホを机の上に置いていた私はスマホがないという手段が使えない。

私は仕方なくレシートの裏にトラブルの時の為に用意していた捨てアドを書きおじさんに手渡す。よく考えると机にスマホを置いていたのは電磁波的に良いのか疑問に感じながらぎこちない笑顔でその場を去った。

後日談になるが、日本に帰国後数週間して恐る恐る捨てアドのメールボックスを覗くとおじさんからメールが来ているではないか。怖いもの見たさで開くと、私にカンボジアに来て世界で彼の本を売り込む販促マネージャーになってほしいと書いてあった。

そっと私はメールを閉じ、その捨てアドが二度と使われることはなかった。

結果的におじさんの話だけになってしまったので、罪滅ぼしに美しいカンボジアのポストカードの写真を載せます…

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カンボジア旅行記は次で最後の予定です。