スペインに住んでいた時、毎日図書館に通ってスペイン語の勉強をしていた。お腹が空いたらバゲットを買い、図書館の前の公園で食べてパンくずを鳥にあげているうちに鳥界で有名になってしまったらしい。
私がベンチに座ると鳥の集団が周りに集まってきて落ち着いて食べられないので、いつのまにかカフェでピンチョ(タパスのこと)を食べるようになった。
ある日カフェで友人のスペイン人カップルにスペイン語のテキストを見せてと言われた。テキストをざっと見た男性(ホセとする)が、これは南米のスペイン語が混ざってるから良くないテキストだよ!もっと良いテキストがあるはずと熱く語り出す。
私は通じればいいの…と言いたい気持ちを抑えつつ、ホセのスペイン語講義を黙って聞く。
スペイン語であなたに相当する単語は二つある。túとustedだ。(ustedの方が丁寧な言い方)
そのテキストにはustedが多用されていたことがホセの気に入らなかったポイントらしい。
Ustedはスペインでは滅多に使われず、túばかりが使われている。スペイン語では主語によって動詞の活用が変わるので、ustedを使わない方が学習者としては楽だが、南米では多用されていたりするので注意が必要だ。
スペイン語はアメリカ人がよく勉強する教科なので、南米出身者が多用するustedをテキストから省くのは現実的ではないのだろう。スペイン人が"洗練されている"と自賛する、スペインで使われているスペイン語だけのテキストはなかなか見つからなかった。
(ちなみに私はスペイン語は英語で説明されているテキストや問題集を使用していました。その方が分かりやすかったので)
スペインから帰国後、南米出身の人と話す機会があった。私がスペイン語を話すことを知ると、興味深そうにどこで勉強したのかを聞いてくる。スペインだと知った彼は、南米のスペイン語の方がクールでいいよ。向こうのスペイン語は好きじゃない。と言う。
イギリス人とアメリカ人が相手の英語を心良く思わない人がいるのと同じだなと感じた。皆自分の言語に誇りがあるのだ。
私は日本語の音の響きが好きだ。昭和時代に文豪に使われていたような、美しい表現を見ると日本人に生まれて良かったと思う。日本語を話す国が遠くにあったら面白かったかもしれないとふと思った。
写真は本場スペインのバスクチーズケーキ。日本で売られているのとは味も別物です😌